チタンという選択

チタンという選択

MONORALBIKESは、なぜチタンフレームにこだわるのか。

そもそもチタンとはどんな素材なのか――そのことについて書いてみたいと思います。

現在、スポーツバイクのフレーム素材は大きく分けて、アルミ、カーボン、クロモリ、そしてチタンの4種類に絞られます。

その中で、なぜ私たちはチタンを選んだのか。

チタン、正確にはチタン合金は、カーボン(C-FRP)が今ほど発達していなかった時代、超軽量フレームの最先端であり、ハイエンドバイクの代名詞でした。

鈍く輝く銀色と、その圧倒的な価格に驚き、憧れた方も多いはずです。

素材重量はアルミが一番軽いですが、重量比強度で勝るチタンが最軽量バイクフレームになったわけです。

しかし2026年の現在、超軽量フレームの主役は完全にカーボンです。

フレーム重量1kgを切るようなバイクフレームを金属で実現することは、現実的ではありません。

素材別重量比強度

素材

引張強さ (MPa)

密度 (g/cm³)

比強度 (MPa/(g/cm³))

相対値(鋼=1)

クロモリ鋼(4130)

700–900

7.8

約 90–115

1.0

アルミ合金(6061/7005)

250–500

2.7

約 90–185

1.0–1.6

3-2.5チタン

620–900

4.5

約 140–200

1.5–1.8

C-FRP(カーボン)
※材料設計に大きく依存

600–1500+

1.5–1.8

約 400–1000+

4–10

 

それでも、自転車の魅力は「軽さ」だけではありません。

今でも「いつかはチタン」と憧れを抱き続けるサイクリストは一定数存在します。

そして、MONORALBIKESを立ち上げた私、角南自身も、まさにその一人でした。

チタンフレームを求めるサイクリストがよく口にする言葉に「上がりのバイク」というものがあります。

数多くのバイクを乗り継いできた末に、「最後はチタンがいい」と辿り着く。

それは、チタンが持つ耐久性と美しさが、単なる性能を超えた“趣向品”としての魅力を備えているからでしょう。

チタンフレームは、経年劣化が極めて少なく、腐食にも非常に強い素材です。

塗装に頼らず、素材そのものの美しさを活かしながら、時間とともに愛着が積み上がっていきます。

その点、高性能でありながらプラスチック素材であるカーボンには、「素材そのものを愛でる」という愛着は生まれにくい。

例えるなら、布製スニーカーと革靴、プラスチック食器と金属食器の関係に近いかもしれません。使い込んでますます愛着が増す相棒です。

 

■フレーム材料としてのチタン

もちろん、「雰囲気がいい」「美しい」だけで高価なフレームは選ばれません。

サイクリストが求めるのは、最終的には「乗って感じる良さ」です。

チタンフレームの魅力を一言で表すなら、

「よく進むのに疲れない」

あるいは

「硬くないのによく進む」

という独特の乗り味です。

これはスペック表には現れない価値ですが、実際に乗る人にとっては非常に重要な性能です。

「よく進む」とは、ペダリング時の変形が少ない=剛性があるということ。

しかし、ただ剛性が高いだけでは、路面からの振動をいなせず、疲れるフレームになってしまいます。

振動吸収性はフレーム設計にも大きく依存しますが、サスペンション構造がない場合、そのベースを決めるのは素材の特性です。

チタンとよく比較されるのが、クロモリ鋼のスチールフレームです。

チタンは重量がスチールの60%で軽いという特長がありますが、さらに重要な違いは「内部減衰」の大きさにあります。

一般的にスチールフレームは「乗り心地が良い」と言われますが、クロモリ鋼そのものは非常に硬く、素材自体に衝撃吸収性はほとんどありません。

スチールスプリングが跳ねるのと同じで、衝撃は吸収されず反発します。

その代わり、クロモリ鋼は弾性限界が非常に高く、大きく変形しても元に戻る性質を持っています。

そのため、スチールフレームはフレームチューブを細く設計し、大きくしならせることで衝撃を吸収します。この“しなり”が生み出す、バネのようなスナップ感が魅力ですが、一方で「漕ぎが重い」「ペダリングとリズムが合わない」と感じることもあります。

余談ですが、アルミは弾性限界が一番低く、変形させると割れてしまうため設計でガチガチにしているのでアルミフレームは結果硬くなっています。

一方、チタンはスチールよりも素材自体は柔らかいため、フレームチューブは太く剛性の出る寸法になります。よってフレームが大きくしならないように設計されています。MONORALBIKESでは特にダウンチューブの太さを重視しています。

しかしその状態でも、路面からの衝撃を“吸う”ような特性を持っています。

これがチタンの持つ「内部減衰」の大きさです。
スチールより軽量かつ内部減衰が大きい、これこそがチタンがバイクフレームに適しているポイントなのです。

そしてこの違いは、乗ればすぐに体感できます。「硬いのに硬くない」という不思議な乗り味はここから来ています。

ちなみに、内部減衰が最も大きいのはC-FRP(カーボン)です。炭素繊維と樹脂の多層構造により、エネルギーを吸収する界面が材料内部に多数存在するためです。比強度も非常に高く、性能だけを見れば最も優れた素材と言えるでしょう。

しかし――

・乗り味の良さ
・軽量性
・愛着を持てる美しさ

この三つを高いレベルで併せ持つのが、チタンフレームです。

だからこそ私たちは、この素材にこだわり続けています。

 

製造について

MONORALBIKESは、中国の提携工場で生産しています。

「中国製」と聞いてネガティブな印象を持つ方も少なくありません。

しかし、工業の実情を知っている人であれば、中国製=ハイクオリティという現実をご存知のはずです。

そもそも、日本国内でチタンフレームを量産できる工場は、私の知る限り存在していません。

実際に、私たちが関わる工場では、日本や欧米の著名ブランドのOEM生産も行われています。ただ、それが表に出ないだけです。

チタンは非常に扱いの難しい素材です。さらに、薄肉チューブを高精度で溶接する工程は、今でも職人の技術に大きく依存しています。

・溶接には高度なシールド環境が必要
・コンタミネーション管理が重要
・材料コストが高い

これらの理由から、チタンフレームの製造には高い技術と設備が求められます。

工場の溶接職人は、最低でも三年間のトレーニングと厳しい試験を経て、ようやくフレーム製造を任されます。

ある工場では小物溶接から始まり、段階的に難易度の高い工程へ進むなど、体系的な育成が行われています。若くして工場に入り何年も修行して、体力的に充実した20代で一人前のフレーム職人になる。朝から晩まで溶接しているので習熟度も上がります。今の日本では稀有なことではないでしょうか。

一方、カーボンフレームは材料シートをカットして、型に貼り付けて製造します。手間はかかるものの、個人技能に依存しにくい点が、普及の一因でもあります。代わりに設備投資が大きい。

なお、MONORALBIKESが比較的手に取りやすい価格を実現できているのは、

工場直結の生産体制と、日本メーカーであることによる流通のシンプルさにあります。

一般的な流通が

アジア工場 → 欧米メーカー → 日本代理店 → 小売店 → ユーザー

であるのに対し、

アジア工場 → 日本メーカー → 小売店 → ユーザー

という流通構造を取っているためです。

 

■チタンという選択

チタンは、すべての人にとって最適な素材ではありません。

軽さと走行性能を最優先するならカーボン。
コストと剛性感ならアルミ。
しなやかさを楽しむならクロモリ。

それぞれに個性があります。

その中でチタンは、

「長く愛着を持って乗ること」
「身体との調和」
「道具としての魅力」

を重視する人のための特別な素材です。効率だけでは語れない価値。数値では説明しきれない乗り味。

それを求める人にとって、チタンは単なる素材ではなく、ひとつの“終着点”になり得ると、私たちは考えています。

 

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